「人工宝石」と聞くと、「安っぽい」「偽物っぽい」という印象を持つ人も少なくありません。
しかし実際には、モアサナイトやラボグロウンダイヤモンド、合成ルビーなどのラボグロウンストーンは、天然石に劣らぬ美しさと確かな価値を持つ宝石です。
本記事では、それぞれのラボグロウンストーンの特徴や違い、用途別の選び方まで徹底的に比較・解説します。
「本当に意味のある宝石選び」をしたい方に向けて、あなたの価値観に合った一石を見つけるヒントをお届けします。
ラボグロウンストーンとは?人工宝石と合成宝石の違い

「ラボグロウン」とは何か?用語の整理
「ラボグロウン(Lab-Grown)」という言葉を耳にする人も多いのではないでしょうか。
直訳すれば「実験室で育てられた」という意味です。
また、ジュエリーの文脈では、「人工的な環境で育てられた宝石」のことを指します。
たとえばモアサナイトや人工ダイヤモンドなどは、ラボグロウンストーンの代表格。天然石のように地中で何千万年もかけて生まれるのではなく、人の手によって短期間で育てられる宝石です。
ポイントは、「育てる(グロウン)」という表現が使われていること。
これは単にコピー品を作るという意味ではなく、自然の構造や環境を忠実に再現して、「宝石として成長させる」というニュアンスを持っています。
だから「ラボグロウン」という言葉には、高度な技術と自然への敬意が込められているとも言えるでしょう。
人工宝石・合成宝石・模造石の違いとは?

ラボグロウンという概念に関連して混同されがちなのが、「人工宝石」「合成宝石」「模造石」といった用語の違いです。
それぞれ意味合いが微妙に異なるため、以下のように整理しておきましょう。
用語 | 定義と特徴 |
---|---|
人工宝石 | 人工的に作られた宝石の総称。天然でなくても、宝石として認められる品質を持つ。例:モアサナイト |
合成宝石 | 天然宝石と同じ成分・構造を持つものを人工的に再現した宝石。例:合成ルビー、人工ダイヤ |
模造石 | 外見だけを似せた素材で、成分や構造はまったく異なる。例:ガラス製、キュービックジルコニア(CZ)など |
つまり、「人工宝石」は広い意味で、合成宝石やモアサナイトのように本物として扱われる石を含みますが、「模造石」はあくまで外観だけを真似た代用品です。
この違いを理解することで、「人工=なんとなく安っぽい」という先入観から離れることができるはずです。
「人工=偽物」ではない理由
日本では特に、「人工」という言葉に偽物というイメージを持たれやすい傾向があります。
しかし、実際には人工宝石の多くが、素材としての純度や美しさで天然石に劣らないどころか、勝る部分すらあるのです。
たとえばラボグロウンダイヤモンドは、成分も構造も天然ダイヤとまったく同じ。専門機器を使わないと見分けがつかないほどで、宝石学的には本物のダイヤモンドと認められています。
モアサナイトも、炭化ケイ素という固有の結晶構造を持ち、硬度や輝きはダイヤに匹敵するほど。模倣品ではなく、独立した「本物の宝石」として確立された存在です。
むしろ、「人工=計画的に美を追求できる」という点で、天然石よりも一貫した品質や倫理性を備えているとも言えるでしょう。

本物か偽物かを決めるのは、誰かの価値観や古いラベルではなく、選ぶ人自身の納得。
そのためにも、言葉の意味と背景を正しく知ることが、ジュエリー選びの第一歩になります。
代表的なラボグロウンストーン3種の特徴を解説

モアサナイトの特徴と評価
モアサナイトは、ラボグロウンストーンの中でも特に人気が高く、市場での認知度も急上昇している宝石です。
もともとは隕石の中から発見された希少鉱物ですが、天然ではほとんど採取できないため、現在流通しているものはすべてラボで育てられています。
特徴としてまず挙げられるのは、非常に強い輝き。
光の分散率(ファイア)が高く、見る角度によって虹のような色彩が浮かび上がるのが大きな魅力です。
また、モース硬度9.25という高い耐久性を持ち、日常使いのジュエリーにも適しているのが人気の理由。
ダイヤモンドに比べて価格が大幅に抑えられるため、「見た目は華やか、でも手が届く」選択肢として支持されています。
一方で、「ダイヤの代用品」や「偽物と思われるのでは」といった先入観を持たれやすい面もあり、購入時にはその価値や背景を理解しておくことが重要です。
人工ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤ)の特徴
人工ダイヤモンド、あるいはラボグロウンダイヤモンドは、天然のダイヤモンドとまったく同じ化学組成・結晶構造を持つ本物のダイヤです。
生成方法には主に2つの技術があり、
- HPHT法(高温高圧):天然ダイヤと同じ環境を再現
- CVD法(化学蒸着):炭素を積層して結晶を成長させる
いずれの方法でも、数週間〜数ヶ月で宝石品質のダイヤモンドが育成されます。
見た目、硬度、輝きすべてが天然ダイヤと同等であり、専門機関の鑑定がなければ区別できないレベルです。
最大の魅力は、天然より価格が抑えられること、そして倫理性の高さ。
「コンフリクトダイヤ」や環境破壊に加担しないという点から、近年は欧米を中心に婚約指輪の選択肢としても定着しつつあります。
合成ルビー・サファイアの特徴と背景
ルビーやサファイアといったコランダム系の宝石も、ラボで合成される代表的なストーンです。
これらは、19世紀後半からすでに製造技術が確立されており、宝石界では最も歴史ある合成宝石のひとつと言えるでしょう。
合成ルビー・サファイアは、天然のものと同じ化学組成(酸化アルミニウム)を持ち、外見もほぼ見分けがつきません。
多くはフレーム技法やベルヌーイ法といった製造方法で生成され、天然に近い成長パターンを再現しています。
用途としては、ファッションジュエリーから高級時計のインデックス、医療用部品まで多岐にわたるなど、実用性の高い宝石として広く活用されています。
一方で、天然石に比べると価値が低く見られる傾向があるため、その違いを理解した上で選ぶことがポイントです。
ラボグロウンストーンの比較一覧表

価格・輝き・耐久性・資産価値の違い
以下は、モアサナイト・ラボグロウンダイヤモンド・合成ルビー(サファイア)の代表的な比較項目を一覧表にまとめたものです。
特徴 | モアサナイト | ラボグロウンダイヤ | 合成ルビー/サファイア |
---|---|---|---|
化学組成 | 炭化ケイ素(SiC) | 炭素(C) | 酸化アルミニウム(Al₂O₃) |
輝き(屈折率) | 約2.65〜2.69(非常に強い) | 約2.42(天然と同等) | 約1.76(落ち着いた光沢) |
モース硬度 | 9.25 | 10(最高) | 9 |
価格帯 | 比較的安価(1〜5万円台〜) | 中価格帯(天然より安い) | 非常に安価(数千円〜) |
資産価値 | リセール価値は低い | 一部市場で資産価値あり | 資産価値はほぼない |
見た目の特徴 | 虹色のファイアが強め | 上品な白色光 | 深みのある色味が魅力 |
認知度・普及度 | 高まりつつある | 欧米で急増中 | 長い歴史があり普及済み |
このように、人工宝石とひとくくりにされがちでも、性質や用途には大きな違いがあります。
特に注目したいのは、輝き・価格・リセール価値といった判断軸が人によって異なる点です。
用途(婚約指輪・ファッション・プレゼント)ごとの相性
目的別に考えると、どの宝石が合っているかがさらに明確になります。
婚約指輪に向いているのは?
ラボグロウンダイヤモンド:
天然ダイヤにこだわらず、輝き・信頼性・資産性も重視したい場合に最適。
モアサナイト:
個性・価格・見た目のインパクト重視派に人気。価値観に共感できるカップルに◎。
ファッションジュエリーなら?
合成ルビー・サファイア:
色味が強く、アクセントになる。価格も手頃で毎日使いにもぴったり。
モアサナイト:
ダイヤ風の華やかさをファッションに取り入れたい人におすすめ。
プレゼントには?
モアサナイト or 合成ルビー:
価格帯も選びやすく、デザイン性重視の贈り物に最適。
ラボグロウンダイヤ:
特別感を演出したいときや、サステナビリティに共感する相手へ。
それぞれが選ばれる理由

宝石名 | 選ばれる主な理由 |
---|---|
モアサナイト | 美しい輝き/手頃な価格/倫理性/見た目重視の新しい選択 |
ラボグロウンダイヤ | 本物のダイヤ/サステナブル/ブランド志向にも対応 |
合成ルビー等 | アクセントになる色石/歴史ある人工宝石/デイリーユースに強い |
どれも「本物であること」に変わりはありません。違うのはその価値の見せ方と選ぶ理由です。
人工宝石を選ぶという価値観|こんな人におすすめ

サステナブル志向・エシカル消費層に選ばれている
近年、消費者の価値観が大きく変わりつつあります。ただ「高価だから」「希少だから」という理由だけで宝石を選ぶのではなく、その背景や製造プロセスに共感できるかどうかが、購入の判断基準になり始めています。
ラボグロウンストーンは、採掘を伴わないため環境破壊の心配がなく、人権問題とも無縁。

美しいものを身につけたい。でも、それが誰かの犠牲の上に成り立っていてほしくない
そんなやさしい選択をしたい人たちの間で、人工宝石は確実に支持を広げています。
合理性と美しさのバランスを重視する人にフィット
人工宝石は、「見た目の美しさ」や「耐久性」などの点でも天然石に劣らない性能を持っています。
さらに、同等クラスの天然宝石と比較して価格が圧倒的に抑えられるため、「良いものを、賢く選びたい」と考える人にとっては、非常に魅力的な選択肢です。
婚約指輪や記念のジュエリーとして、無理をせず、意味を込めたアイテムを贈るという考え方は、これからの時代にますます求められるスタイルでしょう。
個性やメッセージ性を大切にしたい人におすすめ
ラボグロウンストーンは、「天然でなければならない」という固定観念から離れた、新しい価値観の象徴でもあります。
- 周囲とは少し違った視点で宝石を選びたい
- 自分の選択にストーリーや意味を持たせたい
- 「知っている人は知っている」宝石を身につけたい
そんな人にこそ、モアサナイトや人工ダイヤはぴったり。
価格やブランドにとらわれず、自分らしい理由のある選択をしたい方には最適です。
まとめ|「どう生まれたか」を知ることで見えてくる宝石の本質
宝石を選ぶとき、私たちはつい「輝き」や「値段」といった目に見える要素ばかりに注目しがちです。
けれど、その奥にはもう一つ、大切な視点があります。それが、どうやって生まれたのかという背景です。
ラボグロウンストーンは、ただ安価な代用品ではありません。それぞれが高度な技術と理念のもとに生まれた、美しい本物の宝石です。
どれも、偽物などでは決してありません。それぞれが違うストーリーと価値を持つ、現代の選択肢です。
「ラボグロウン=人工=劣っている」といったイメージは、時代とともに確実に変わってきています。
むしろ今は、「何を大切にするか」「どんな思いで選ぶか」が問われる時代。
宝石はただの飾りではなく、あなた自身の価値観を映し出すものです。
天然であるか人工であるかではなく、その宝石にどんな意味を込めて選ぶかが、最も美しい部分なのかもしれません。

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